12月にもなると、水温も下がって江東区の各運河の水の透明度も高くなり、晴れた日には結構底まで見えたりします。水温は下がったとは言え、釣りしてるときに試しに手を浸けてみると割とまだ暖かい。水温計で計ってないのだけど、13か14℃はありそうだ。

人間、対象物が見た目きれいに見えると、全部が全部きれいなものと判断しがちなんですが、運河の水も透明だと水質も全く問題ないものと思い込んだりします。夏場の赤茶色の水を毎年見ているはずなんですが…(笑)

冬の透明度

光の具合で緑に見えるけど、底まで見えますね。こうやってシーバス釣りをする者はこの時期にこういうポイントになりそうなところチェックしてます(笑)

これだけの透明度を誇る運河の水(海水)ですが、確かにCODやBODの数値も基準を下回ることがホトンドの状態を維持してはいます。以前、『江東区臨海部に見られる赤潮の状態と水質について』っていうのを書いたのですが、それをお読みいただければ、CODがなんだとか、江東区の運河の水ってどうなの!? 的なことがちょっとわかるかと思います。

ということで、江東区の運河のみならず東京湾全体、ひいては日本を取り囲む海の水質が良好に保たれるには、下水がどう処理されているのか、されるべきかといったことに興味があったわけです。それで下水道局のサイトなど見ていたら、下水処理場、今は水再生センターというのですが、東京の各水再生センターをひとりでも見学受付けてくれるということだったので、申し込みをして12月7日に砂町水再生センターを見学させていただくことになりました。
お申し込みはこちら
見学申し込み電話番号

当日、チャリで向かいました。午前10:00から約90分の見学スタートです。
砂町水再生センター入り口

入って行くと案内板がありました。これで江東区のどのへんに位置するかわかるでしょうか。
砂町水再生せんたー内案内板

建物の中へ入ると、今回案内していただく小川さんと安彦(あびこ)さんが待っていてくれました。僕ひとりのためにお2人も…すみません。お二方とも下水道局OBで、こうしたボランティアとして活動されているということです。

で、まずは4階の部屋に案内いただき、そこでスライドによる解説ということでした。席に着くとパンフレット3部いただきました。
パンフレット3部

スライドによる解説

下水処理の仕組みから東京にある水再生センターの紹介からあれやこれやと、ただスライドを流すだけでなく小川さんご自身からも細かいところをお話していただきました。

スライド解説01

スライド解説02

この日自分ひとりだということで、気になっていたことを直接お尋ねすることも出来てよかったです。

砂町水再生センターは…

昭和5年に稼働した東京で2番目に古い水再生センターです。砂町処理区は、隅田川と荒川に囲まれた通称江東デルタ地帯で、墨田区の全部、江東区の大部分、中央・港・品川・足立・江戸川区の一部からなる広大な区域(6,153ヘクタール)から発生する下水を有明水再生センターとともに処理しています。
処理した水は東京湾に放流しています。また、その一部を砂ろ過してセンター内の機械の洗浄・冷却やトイレ用水などに使用しています。
発生した汚泥は、センター内の東部スラッジプラントで炭化・焼却処理しています。

ウェブサイトやいただいたパンフによると、1日の下水処理量は658,000立方メートルということになっています。小川さんによれば砂町で6万トン、有明で3万トンを処理しているのだけど、やはりゲリラ豪雨などで一気に下水が流入してくると、全てを処理しきれずやむを得ず、放流してしまうということでした。これはなんとかして欲しいところですね。

僕が途中であれこれ質問したもんだから時間が押してるということで(笑)、スライド解説が終って下水処理の要の施設を見に外へ出ます。

敷地内の歩道に敷き詰められた赤いタイルのようなものですが、これは下水処理の結果出た汚泥から再生させてできたものだそうです。汚泥もこうして有益な資源だったりして、だったらこれを商品化して売れば、設備投資の足しになるんでは? と尋ねたら、いろんな事情で売り物には出来ず(民業圧迫とかで!?)、敷地内で利用するか、必要とするところへ無償で引き渡すらしいです。どっかのスタートアップで東京の水再生センターから汚泥資源集めて商品化する事業やってないのか!?

汚泥から再生された歩道のタイル

と、そんなことを伺いながら、雨水貯留池前に。
雨水貯留池案内板

これだけの広さの下、水が溜められるわけです。
雨水貯留池

そして来ました。第一沈殿池
第一沈殿池看板

画像中の文字読めればいいけど、下水が最初に入る『沈砂池(ちんさち)』で大きなゴミを取り除いてからポンプで『分水槽』に汲み上げ『第一沈殿池』へ運ばれます。
第一沈殿池

延々とこれだけのスペース確保しているわけですね。それでもキャパオーバーすることがあるってことなので、その量って数字で言われてもピンと来ないのが正直なところ…
第一沈殿池広大な面積

ちょうど水を抜いたところがあったので、開けて見せてもらいました。こんな感じでした。
第一沈殿池中

そして第一沈殿池の水まで見せていただきました。この段階で結構澄んでます。臭いもそれほどしませんでした。
第一沈殿池の水

ここで2〜3時間かけて沈みやすいものを沈めさせて、次の『反応槽』へ送られます。
反応槽看板

『反応槽』っていうからには何に反応するの? ってとこですが、下水をきれいにするということは濾過作業を繰り返すとか、何か薬品を使ってきれいにすることかと最初に想像しますよね。

ところが実際に処理するのは微生物! 50種類ほどの微生物が活躍しているようで、アメーバ、ツリガネムシ、アスピディスカ、リトノツス、プレファリス、カエトノツス(イタチムシ)、マクロビオツス(クマムシ)などなど、中には聞いたことのある微生物がいるのでは? 微生物マニア垂涎の飼育槽かもw
スライド解説03

そしてここでも反応槽から水を汲み上げ、見せてくれました。先ほどの第一沈殿池の水に比べかなり汚れてます。
反応槽の水を汲み上げて

この汚れ具合!
反応槽の汚泥水

反応槽で微生物の入った活性汚泥を混ぜるのでこれだけ濁ります。微生物に汚れを分解してもらうのですが、6〜8時間ほどかき混ぜて空気を送り込み、微生物の活動を促し汚れを分解してもらいます。そしてやがて固まってきて沈んでいくということです。ものの数分で上澄みが徐々に透明度を増して来た。
汚水の透明度が増して来た

そしてさらにあっと言う間にここまで…
反応槽の水の透明度さらに増す

反応槽の中を見せてくれました。かき混ぜられてます。ここはさすがにちょっと臭ったかな。
反応槽中

次に『第二沈殿池』へと移動。
第二沈殿池看板

第二沈殿池

ここまで来ると汚水はかなりキレイな状態になってました。飛来して来たカモが水面浮かんでいました。
第二沈殿池+カモ

反応槽で数時間かけて活性汚泥の塊を沈殿させてキレイな上澄みと汚泥とを分離するところです。またここでも水を掬って見せていただきました。透明度はバッチリですね。
第二沈殿池の水

見せていただいた施設はここまででした。ここまで処理された汚水は、このあと塩素消毒して海へ放流されます。

さらに下水の高度処理施設があるところでは、ここに汚水を通すことで窒素やリンの除去がさらに進められ、海の水質向上に繋がります。窒素やリンの除去はこれまで見て来た通常の微生物による分解ではなかなか進まないこと、以前ネットで調べて知りました。

ちなみに高度処理施設が全ての水再生センターに設置されれば、江東区の面する海で問題なく海水浴が出来るレベルにしてしまえるそうです。ただ、そうするにはまだまだ時間、場所、費用が掛かるということです。せっかく技術的なことは確立されているなら、もっと加速できないものかなぁ…。下水料金倍にしたらイケるのか!? ま、お金の問題だけではないのですが、芝浦の塩素混ぜただけでサッと運河に放流してしまうのはなんとかしてもらいたいですねぇ。ゲリラ豪雨などがあったときだけかと思っていたら、年間120日ほどそんなことしているという報告もありました。

海の水質問題解決には時間の掛かることなので、一時のことでなく出来るだけ多くの人に問題意識を持ち続けてもらって、水質改善を訴える力を広めていくキッカケ作りは必要だなぁと。
この日ご案内いただいた小川さん安彦さんありがとうございました。

江東区の海で遊ぶ会で、『水再生センター見学会』を開催しましょうかね。

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